ロレックスの「価格」でも「人気」でもない選び方。"ステータス"に流されず本質で決めるために。
ロレックスという名前は、それだけで十分な説得力を持っている。
しかし本当に価値ある一本を選ぶには、誰かが決めたステータスではなく、自分の感覚に確かな理由があるかどうかだ。
本記事では、ロレックス スポーツモデルの代表的な以下7モデルを紹介したいと思う。
選ぶ理由を、見た目でも値段でもなく「なぜこれなのか」と言えるものに。
これは、“所有する”ことに意味を求める大人に向けた、ロレックスの入り口である。
ロレックスのスポーツモデル(プロフェッショナルモデル)とは
ロレックスのモデルは、大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類される。
- スポーツウォッチ(プロフェッショナルウォッチ)
- クラシックウォッチ(ドレスウォッチ)
- コンプリケーションウォッチ
簡単に説明すると…
スポーツウォッチ
(プロフェッショナルウォッチ)
特定のスポーツや活動での使用を想定して設計された、機能性や堅牢性に優れたモデル。今回はこのカテゴリーの主要モデルについて解説する。
クラシックウォッチ
(ドレスウォッチ)
フォーマルな場面やビジネスシーンでの着用を想定した、上品でシンプルなデザインが特徴。機能は比較的シンプルだが、素材や文字盤のバリエーションが豊富。
コンプリケーションウォッチ
これは、厳密には上記のカテゴリーと重なる部分もあるが、特に複雑な機構(コンプリケーション)を持つモデルを指す。スカイドゥエラー(GMT機能とアニュアルカレンダー機能を合わせ持つ)などがその例に挙げられる。
ロレックス スポーツモデル主要7モデルの比較と考察
以下に、各モデルの「概要と歴史」「主な機能・スペック」「素材・価格帯・ターゲット像」を整理してみた。
それぞれがどんな目的で生まれ、どのように進化し、どのような人に選ばれてきたのか。そこから“選ぶ理由”を見出していく。
コスモグラフ デイトナ
画像参照|ロレックス公式サイト概要・歴史
1963年に登場したロレックス唯一のクロノグラフモデル。米フロリダ州デイトナの有名サーキット名に由来し、当初はプロレーサー向けに開発されました。発売当初は不人気でしたが、俳優ポール・ニューマンの愛用で一躍有名となり、その後もマイナーチェンジを重ねて進化し、現在では世界中で高い人気を博す象徴的モデルです。
デザイン
ケース側面のプッシュボタンとベゼルのタキメータースケールを備え、スポーティさとエレガントさを兼ね備えたデザインです。これらの特徴はレースカーの速度計測のために生み出されたもので、デイトナのスポーティなイメージを際立たせています。さらに、視認性の高いインデックスや洗練されたケースフォルムなど細部まで非常に美しさが追求されています。
素材・価格・ターゲット
素材はステンレススチール(オイスタースチール)を中心に、ゴールドやプラチナモデルも展開。新品定価はステンレスモデルで約180万円、金無垢やプラチナは300万円超で、需要過多により市場取引価格は定価を大きく上回ります。モータースポーツ志向で開発された経緯から、高級クロノグラフを求める愛好家に支持され、現在もロレックスの中核をなす人気モデルです。
サブマリーナー
画像参照|ロレックス公式サイト概要・歴史
1953年に誕生し、1954年に正式発表された世界初の100m防水ダイバーズウォッチで、当時世界中から大きな注目を浴びました。回転ベゼルで潜水時間を計測でき、登場以来モデルチェンジを重ね現行では300m防水まで進化しました。ダイバーズウォッチの代名詞として長年愛され、ロレックスのスポーツモデルの中でも常に高い人気を誇ります。
デザイン
逆回転防止ベゼルや大きな夜光インデックスなど、実用性と洗練を兼ね備えた不変のデザインです。堅牢なオイスターケースとねじ込み式リューズによる高い防水性能(現行モデルは300m)に加え、水中でも視認性を確保するシンプルな文字盤レイアウトが特徴となっています。また、厚みを抑えたケースデザインとリューズガードにより、日常使用でも快適な装着感と頑強さを両立しています。
素材・価格・ターゲット
素材はステンレススチールを基本に、18K金とのロレゾール(コンビ)や18Kイエローゴールド/ホワイトゴールド無垢モデルもラインナップされています。国内定価はノンデイト約95万円、デイト付き約108万円ですが、入手困難により中古市場では定価の1.5~2倍前後のプレミア価格で推移しています。プロダイバー向けに開発された経緯から、高い防水性と耐久性を求めるダイバーや時計愛好家に支持される、ダイバーズウォッチの王道的存在です。
エクスプローラー
画像参照|ロレックス公式サイト概要・歴史
エクスプローラーIは1953年、人類初のエベレスト登頂成功を記念して冒険者向けに開発されました。高地での耐久性と視認性を追求したロレックス初のプロフェッショナルモデルで、黒文字盤に3・6・9の大きな数字インデックスを配したシンプルな意匠が特徴です。その上位機種として1971年に登場したエクスプローラーIIは、暗所での昼夜判別を目的に24時間針と固定ベゼルを備えたモデルで、洞窟探検など長時間太陽光の届かない環境での使用に応えました。
デザイン
エクスプローラーIは半世紀以上ほぼ変わらない36mm前後のステンレスケースに黒文字盤、3・6・9のアラビア数字という極めてシンプルなデザインで、抜群の視認性と不朽のスタイルを備えています。一方、42mmケースのエクスプローラーIIはオレンジ色の大型24時間針と固定式の24時間目盛ベゼルを特徴とし、暗所でも現在時刻と24時間表示を同時に読み取れる機能的デザインとなっています。
素材・価格・ターゲット
素材は長らくステンレススチールのみでしたが、現行エクスプローラーIではステンレスと18Kイエローゴールドのコンビモデルも登場しています。定価はエクスプローラーIが約71万円、エクスプローラーIIが約94万円ですが、いずれも正規店入手が困難で中古市場では定価を上回るプレミア価格で取引されています。エクスプローラーIは冒険者のために高耐久・高視認性を追求して開発され、一方のエクスプローラーIIは洞窟など暗所で活動する探検家のために設計されたモデルです。
シードゥエラー(ディープシー)
画像参照|ロレックス公式サイト概要・歴史
シードゥエラーは1967年に初代モデルが登場した、サブマリーナーの上位機種となるプロ仕様ダイバーズウォッチです。ヘリウムガス排出バルブを搭載し、当時サブマリーナーでは対処できなかった飽和潜水時の内圧問題を克服するために開発されました。初代モデルの防水性能610mからさらに強化され、現行モデルでは1,220m、派生モデルのディープシーでは3,900mという驚異的な深度に耐えます。
デザイン
外観はサブマリーナーに一見似ていますが、より厚いケース壁と強化サファイアクリスタルで超高水圧に耐える構造になっています。ケース側面にはシードゥエラーの象徴であるヘリウムエスケープバルブを備え、飽和潜水からの減圧時にケース内部のガスを自動排出する設計です。日付表示を持ちながら、長らくサイクロップレンズを廃したフラットな風防を採用するなど、プロユースゆえの実用本位のデザインが貫かれています。
素材・価格・ターゲット
素材は基本的にステンレススチールのみですが、2019年にはシリーズ初のロレゾール(コンビ)モデルRef.126603が登場しました。定価はシードゥエラー約140万円、ディープシー約133万円(Dブルー約136万円)で、希少性もあって中古相場は160~200万円前後と定価を大きく上回ります。ターゲットはプロの飽和潜水ダイバーであり、その卓越した性能から現在では深海探検や潜水作業に携わる専門家、そして究極のダイバーズウォッチを求めるコレクターに選ばれています。
GMTマスターII
画像参照|ロレックス公式サイト概要・歴史
GMTマスターIIの前身であるGMTマスターは、大陸間飛行で複数の時刻を把握するため1954年にパンアメリカン航空と共同開発されました。24時間表示の第4時針と赤青の二色ベゼルによりホームと現地の時刻を同時に表示する革新的機能を備えています。約30年後の1983年に時針を独立調整できるGMTマスターIIが登場し、世界を飛び回るビジネスマンや旅行者に前例のない利便性を提供しました。
デザイン
GMTマスターIIの最大の特徴は、昼夜を示すツートンカラーで彩られた24時間目盛付きの回転ベゼルです。ペプシ(赤×青)やバットマン(黒×青)など多彩なカラーリングが用意され、先端が矢印形の24時間針と相まって一目でGMTモデルと分かる独自の意匠となっています。また、サブマリーナーと同様に堅牢なオイスターケースを採用しつつ、防水性能は100mに留める代わりにブレスレット中央リンクの鏡面仕上げなどで高級感を演出しています。
素材・価格・ターゲット
素材はステンレススチールモデルが人気ですが、エバーローズゴールドとのコンビ(ロレゾール)やホワイトゴールド無垢モデルなど多様なバリエーションがあります。新品定価はモデルによっておおよそ110万~150万円台ですが、需要過多のため中古市場ではステンレスモデルを中心に定価の2倍近いプレミア価格となっています。元々は国際線パイロットや旅行者向けに設計され、現在でも時差調整が必要な旅好きからコレクターまで幅広い層に愛用されています。
ヨットマスター(II)
画像参照|ロレックス公式サイト概要・歴史
ヨットマスターは1992年に初代モデル(Ref.16628)が登場した、ロレックスのラグジュアリースポーツ路線を象徴するコレクションです。初代は18Kイエローゴールド製で、高級感と防水性を兼ね備え富裕層のクルージングやリゾートライフ向けに開発されました。2007年には本格的なヨットレースに対応するレガッタクロノグラフ機構を備えた「ヨットマスターII」が追加され、10分間のカウントダウンタイマーを搭載した世界初の機械式レガッタウォッチとして登場しました。
デザイン
ヨットマスターIはサブマリーナーに似た外観ながら、プラチナやゴールド素材の艶やかな回転ベゼルと洗練された曲線ケースにより一段とエレガントな雰囲気を持ちます。黒文字盤に大型の針とインデックスを配し、高級感と視認性を両立したデザインです。ヨットマスターIIは44mmの大型ケースにブルーのセラミック製リングコマンドベゼルと10分計の半円インジケーターを備えた独特のダイヤルを特徴とし、2時と4時位置のプッシュボタン操作でカウントダウンを制御するレガッタクロノグラフ機能を搭載しています。
素材・価格・ターゲット
ヨットマスターIはステンレス×プラチナ(ロレジウム)モデルのほか、エバーローズゴールドとのコンビやイエロー/ホワイトゴールド無垢モデルなど貴金属を多用した高級路線です。ヨットマスターIIは当初金無垢(YG/WG)のみでしたが、後にステンレススチールやエバーローズコンビモデルが追加されました。価格はいずれも高額で、中古市場でもプレミアム価格が付く傾向にあります。ヨットマスターIは悠々と海を楽しむ富裕層、ヨットマスターIIはヨットレースに挑むセーラーを主なターゲットとしています。
エアキング
画像参照|ロレックス公式サイト概要・歴史
エアキングは1940年代に「航空界へのオマージュ」をコンセプトに誕生した歴史あるモデルで、ロレックス最古のペットネーム(愛称)を持つコレクションです。第二次世界大戦中には英国空軍パイロットたちに愛用され、その功績を称えて名付けられたとも言われており、以降シンプルな3針時計として長く親しまれました。一時生産終了しましたが、2016年に40mmケースへ大型化し視認性を高めた新デザインで復活し、プロフェッショナルラインに位置づけられています。
デザイン
現行モデル(Ref.126900)はブラックダイヤルに5分刻みの大きなアラビア数字と3・6・9の時数字を配し、緑色のロレックスロゴと秒針をアクセントにした独特のデザインです。航空計器を思わせるこの文字盤レイアウトによって非常に高い視認性が実現されており、パイロットウォッチらしいスポーティーな雰囲気を醸し出しています。ケース径40mm、防水性能100mで耐磁性能も強化されており、計器らしいルックスと実用性を兼ね備えています。
素材・価格・ターゲット
素材はステンレススチールのみで展開されるシンプルな仕様です。定価は約80万円前後とロレックスの中では比較的手頃で、中古市場でも高値傾向ではあるものの他のスポーツモデルに比べれば安定しています。もともとはパイロットへの敬意から生まれたモデルで、現行モデルもその精神を受け継ぎつつ、ロレックスの入門機として初めての一本に選ぶユーザーも多い傾向があります。
“理由のある一本”を選ぶために
ロレックスは、表面の豪華さ以上に“なぜそう作られているか”という設計思想に価値がある。自分にとっての一本を選ぶなら、その理由を言語化できることが重要だ。機能・素材・構造を見つめ、納得して選ぶ。そのプロセスこそが、持つ意味を深めてくれるだろう。